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お客様の本質的な悩みとは
お客様から寄せられるご相談のうち、特に多いのがこの悩みです。
“原稿の意味を汲んで翻訳してほしいのに、全然できない会社が多い”
ご訪問してお伺いすると、このようなご不満やお悩みをお伺いすることがあります。これは最近に限った話ではないのですが徐々に多くなっています。
今回は、それは何故なのか、そしてどうすればお客様のご要望にお応えすることができるのかを考察します。
「原稿の意味を汲む」というのはどういうことか
そもそも、多くのお客様の言う「原文の意味を汲む」というのはどういうことを指しているのでしょうか。
その意味を正確に理解するために、現状をしっかり把握する必要があります。
はじめに、産業翻訳の場合には「原文に忠実に翻訳する」というルールがあります。
これは、翻訳業界にとってはデファクトスタンダードであり「翻訳会社や翻訳者を守る」という点でも明確なルールでもあります。原文に書いてあることを勝手に省略したり、原文に書いていないことを勝手に付け加えたりすれば、「誤訳だ、訳抜けだ」となるからです。
しかしながら、この状態が長く続いているからこそ、冒頭のお客様の「原文の意味を汲んで・・・」という発言につながる可能性があります。事実、このように発言されるお客様が非常に多いことは否定できません。
となると、お客様の望んでいる品質と、産業翻訳業界での「原文に忠実に」というルールは相容れないことになります。
直訳とは何か、意訳とは何か
では「直訳」ではいけないということでしょうか。すべてお客様に合わせるべきでしょうか。
「直訳」とは何でしょうか。またそれに対する「意訳」とは何でしょうか。
翻訳会社の立場から言えば、「直訳」であっても何も問題はありません。「産業翻訳」としては、誤訳も無く、訳抜けもない、問題のない品質だと言えます。
しかし、お客様から見ると「直訳では問題だ」という事実もあるわけです。この事実に目を背け、「いや、問題ありません」というだけでは、議論は平行線のままです。
大切なのはこの事実をそのまま受け止め、このギャップを埋めることです。
産業翻訳のルールを変えればいい
もしお客様が求める品質がすべて「正」だとしたら、(極端に言えば)産業翻訳の「原文に忠実に翻訳する」というルールをすべて変更すればいいように思えます。(どのように変更すればいいかは置いておきます)
しかし、少し考えてみるとこれもおかしいということに気づきます。
なぜなら、お客様側には一貫した判断基準がないからです。「お客様」自体がさまざまな業種、さまざまな職種にはじまり、企業ごとの状況も異なっています。その中でどこまでが直訳で、どこからが意訳なのか、またどういう方向性(文体や表現)を好んでいるのかなどはお客様ごとにバラバラで「正解」が見えにくいのです。結局のところ、「お客様」という大きな括りになってしまうと、誰に合わせたらいいのか分からないため、非常にぼやけた話になってしまいます。
また、ドキュメントの性質から考えた場合、正確な翻訳(=直訳)の方が大切で必要だというケースも多く存在します。
※ドキュメントの性質や用途をまとめた「ドキュメントマップ」をご覧ください。
つまり「産業翻訳のルールを変えればいい」という単純な解決方法ではうまくいかないということになります。
ドキュメントの用途や性質には大きな関連がある
上述のように多様な「お客様」の判断基準は一貫性がありません。無くて当たり前だからです。しかし一方で、一貫性があるのは「ドキュメントの用途や元々持っているドキュメントの性質」です。
例えば、契約書なら契約書なりの翻訳の表現がありますし、財務書類なら財務書類の翻訳の仕方があります。
これらの特性を理解して翻訳することは、翻訳会社からすれば当たり前の話です。そのためにコーディネーターがいます。
分野や専門性を考慮し、そのドキュメントに適した訳し方をすることによって、読み手にとって理解しやすいものとなるわけです。
しかし、適した翻訳者をアサインしているにも関わらず、冒頭のお客様の声が増えているのは何故なのでしょうか。翻訳会社が作り上げる訳文がダメだということも無さそうです。
マッチしているときとそうでないときがあるということは、ドキュメントによってかなり訳し方が違うということが分かります。特に冒頭のお客様のコメントで多いのは、どちらかというとマーケティング資料(カタログや Web など)に対してです。
これは、「読み手にしっかり伝わる文章を作りたい」「伝わらなければ意味がない」というリクエストがより強く出てくるドキュメントは、マーケティング資料が多いためです。
ここに、今回のテーマの答えがありそうです。
最近では、 Web サイトの翻訳やローカライズにおいて、テキスト(文章)はますます重要な位置づけを占めており、そこにフォーカスした翻訳サービスをご提供する必要があります。
仮に英語が原文だとした場合、それをそのまま日本語に翻訳しただけでは、Webサイトには適さない翻訳になってしまうこともあるでしょう。これは日本語から英語への翻訳でも同様のことが言えます。
特にキャッチコピーのようなものは、字面を追いかけて翻訳するくらいなら、英語のままにしておいた方が「カッコいい」場合もあります。
クリエイティブに翻訳するということ
ひとつの解決策として、弊社では、「通常の翻訳以上、ライティング未満」という位置づけで「クリエイティブ翻訳プラン」をご用意しています。
コンテンツ向けクリエイティブ翻訳プラン
https://www.trivector.co.jp/service/contentstranscreation/
SNS向けクリエイティブ翻訳プラン
https://www.trivector.co.jp/service/snstranscreation/
「翻訳を超えた翻訳」を作ることが唯一の解決策
このように、マーケティング関連のドキュメントは、ますますテキストが重要となっています。
例えるなら、「翻訳を超えた翻訳」を作ることです。これが SEO 対策としても重要ですし、何よりもっとも大切なのは、そのテキスト(文章やキャッチコピー)を読んだ人が「次の行動」を起こせるかどうかということです。
- SNS(Facebook や Instagram等)の広告を見て、クリック(タップ)するかどうか
- コンテンツを読んで問い合わせするか、申し込みをするか、購入するかどうか
まとめ
「原稿の意味を汲んで翻訳してほしい」というご要望にお応えする解決策としては、
- ドキュメントの性質や特徴をつかむこと
- そのドキュメントに合った表現や言い回しをすること
- それは翻訳を超えた翻訳、つまり「クリエイティブな翻訳」をするということ
と言えます。
せっかくお金を払って翻訳するのですから、「翻訳はコストではなく、プロフィットである」という観点から効果的な翻訳を行っていただくことをお薦めします。
トライベクトル株式会社 代表取締役。会社経営 20年目。翻訳・ローカライズ業界25年。翻訳・ローカライズ実績年間10,000件以上。
「言語コミュニケーションサービス」という領域で、主に翻訳/通訳/ローカライズ、インバウンド対応、コンテンツクリエイティブ、言語学習/研修サービスを提供している。