コロナも明け、少しずつ動きが出てきたようにも思えますが、それでもまだまだ日本経済は円安が続くなど好景気とは言えません。しかしながら、日本における中小企業は全企業数のうち 99.7% を占めており、まさに中小企業こそが強い日本経済の復活のカギというのは間違いのない事実です。
言うまでもなく、日本の経済活動における中小企業の役割は計り知れません。この記事では、「中小企業白書・小規模企業白書」を基に、中小企業がなぜ海外市場へ進出すべきなのか、その戦略と必要性を紐解いてみたいと思います。
今まさに、各産業の中小企業が直面しているのは国内市場の縮小であり、また国内/海外勢を含めての競争の激化です。それらを打開するためにも技術革新(イノベーション)が必要ですし、そのためにも、海外、特にアジア市場への展開が必要となってきます。
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中小企業白書・小規模企業白書とは
中小企業白書・小規模企業白書とは、日本の経済産業省が毎年発行する報告書です。この白書は、中小企業や小規模企業の経営状況や抱えている課題、また市場の動向などがかなり詳細に分析され、まとめられています。
内容は特に中小企業、小規模企業の現状と、未来のビジネスのための重要な指針となっています。これらは政策の立案やビジネス戦略の基盤として広く利用されているという面からも信頼に足るものだと言えます。
さらにこれらの白書を読み込んでいくと分かるのですが、日本の経済状況の変化に伴い、中小企業がどのようにその変化に対応しているのかや、支援策の提案なども含まれているため大変貴重な思慮と言えます。日本の全企業のうち 99.7%を占める中小企業の成長を支える重要なドキュメントなのです。
中小企業の定義・小規模企業の定義
はじめに、それぞれの企業の定義をご説明します。
中小企業:日本において、中小企業は資本金または従業員数に基づいて定義されており製造業、建設業、運輸業などでは300人以下、卸売業では100人以下、サービス業や小売業では50人以下の従業員を持つ企業のこと
小規模企業:小規模企業は、より小さな規模の事業体を指します。一般的には、従業員数が20人以下の企業(一部業種では5人以下)と定義されており、家族経営や個人事業主などのこと
中小企業白書から読み取る日本企業の現状と戦略
中小企業白書によると、多くの日本の中小企業は国内市場の縮小に直面しており、これに対応するために新たなマーケットやチャンスを求めていますが、多くの企業にとって(特に)アジア市場への進出こそが成功の鍵となっていると述べられています。
なお、このアジア地域への進出に成功した企業の事例を見ていくと、以下の2つが大きな勝因と言えます。
海外進出する地域特有の消費者ニーズの理解(マーケティング)
「地域特有の消費者ニーズの理解」とは、異なる地域や文化圏で、その地域の消費者が持っている独特の要望や好みを理解し、それに応えるビジネス戦略のことです。たとえば、日本の中小企業が東南アジア市場に製品を展開/販売する場合には、気候、食文化、宗教的価値観など、その地域の特性を考慮しなければなりません。これは業界用語でいうとまさに「ローカライズ戦略」と言えます。
例えば、ある日本の家電メーカーが東南アジア向けに特化した製品を開発する場合を考えてみたいと思います。現地では湿度が高く、電力などのエネルギー供給が不安定なことが多いため、耐湿性や省エネ機能を備えた製品が好まれるとします。その場合、それらの事情を把握した上で製品開発を進めるのが定石と言えます。また、食品業界で考えると、現地の食文化や宗教的な制約(例えば、イスラム教徒が多い地域ではハラール認証された食品)を考慮した製品開発が必須となってきます。
このように、地域ごとのニーズに合わせた製品やサービスを提供することが、海外市場での成功につながります。市場調査などのマーケティング活動が重要性を帯びています。
海外進出先の文化への適応(ローカライズ)
「文化への適応」とは、異なる国や地域の文化的な特性や慣習に合わせて、製品やサービスを調整することをさします。これもまさにローカライズと言えるでしょう。
文化的な適応の例としては、外食産業での事例が分かりやすいでしょう。
例えば、アメリカのファーストフードチェーンがインド市場に進出する際に、多くのヒンドゥー教徒が牛肉を食べません。この特有の文化的な事情を考慮しつつ、チキンや野菜をメインとしたメニューに変更する必要があります。
また、日本の化粧品メーカーが中東やアフリカの市場に進出する際には、現地の天候、気候や肌の特性、美容観などを考慮して製品を開発することも重要になってきます。例えば、暑く乾燥した気候に適した肌の保護成分の比率をあげてみたり、地域によって異なる肌の色調に合わせた色彩の商品などの展開をすることなどもあります。
これらの例から分かるように「文化への適応」は、製品の特性やマーケティング戦略を現地の文化に合わせて調整し、より幅広い顧客層に受け入れられるようにすることです。
これらのローカライズ戦略がなければ、現地ではその製品やサービスは受け入れられないため、結果として売れることはなく、やむなく市場から撤退ということもあるでしょう。
このローカライズプロセスは、海外市場でのブランドの成功と持続的な成長を支える重要な要素となり、日本企業は対象の地域を様々な側面から理解し、その地域に根差した製品開発とマーケティング戦略を進めていかなくてはなりません。
販路拡大における海外展開の重要性
前述のように、海外市場への販路拡大は、中小企業の継続的な成長と繁栄に欠かせない要素だということがお分かりだと思います。
ちなみに白書によれば、海外市場(特にアジア)への進出は、企業の売上増加に直結し、さらには競争力を高める効果があると記載しています。ここは見逃せない重要なポイントです。
引用:「2023年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要案」
国境を越えたビジネスにおいては、文化的・言語的な違いへの理解と適応が成功の鍵となることはすでに述べた通りですし、地域ごとに異なる法規制や独特のビジネス慣習への対応もマストになってきます。
アジア市場進出に必要なスピーディな多言語翻訳とWeb制作
では、「海外進出や海外展開はどこから始めればいいのだろうか?」という話になります。
これはやはり複数のステップがありますので今回は一般的なステップをご紹介します。これを見ると海外進出(特にアジア市場)を成功させるためには、戦略的で段階的なアプローチが必要だということが分かるでしょう。
ステップ | 補足説明 |
---|---|
市場調査と分析 | ・対象国の市場サイズ、成長潜在性、競争状況を調査 ・対象国の文化や消費者の行動、法規制などの地域特有の要因を理解 |
戦略計画の策定 | ・ターゲット市場に合わせた製品やサービスのポジショニング ・販売チャネル、価格戦略、プロモーション戦略の計画策定 |
法的・財務的準備 | ・現地の法律や税制、会計基準を把握し、遵守 ・初期投資、運転資本、リスク管理に関する財務計画を策定 |
現地ネットワークの構築 | ・現地のビジネスパートナー、供給者、販売代理店との関係構築 ・政府や業界団体とのネットワークの構築 |
運営体制の確立 | ・現地オフィスの設立、管理体制の構築 ・現地スタッフの採用と研修、トレーニング実施 |
製品・サービスの適応 | ・地域特有の消費者ニーズや文化への適応 ・法規制、安全基準などに対する製品の適合 |
マーケティングと販売の実施 | ・企業ブランド認知とイメージ構築のためのマーケティング活動 ・販売戦略の実行と顧客サービスの提供 |
パフォーマンスの評価と調整 | ・市場反応のモニタリングと業績分析 ・戦略の微調整や市場へのさらなる適応 |
適切なローカライズと高い専門性
これらのステップで共通していることは、海外展開/海外進出で成功を収めるためには「すべてのステップでターゲット国に合わせる」ということでしょう。
そのためにどうしても外すことができないのがスピーディで正確な多言語翻訳であり、Web サイトをはじめとした各種ドキュメントのローカライズです。
特に、国を超えてビジネスを展開するということは、少なくともひとつの言語の壁を乗り越えなければならないということです。言語の壁を乗り越えるということは、その国の歴史や文化を理解するということと同義です。
そこには絶対的に専門的な翻訳サービスが必要となります。アジア市場にローカライズされた Web サイトや製品というのは、ブランドの認知度と信頼性を高めるのに必須のツールです。例えば、現地の文化や消費者の嗜好に合わせたコンテンツの作成などは当然、準備しておくべきでしょう。
日本市場だけではなく海外市場(特にアジア市場)を見通したときに、専門性の高い内容をその国に合わせた形でローカライズできれば、相手とのコミュニケーションをスムーズにしてくれますから、結果的にビジネス自体もスピーディに進められると言えます。
まとめ
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html
トライベクトル株式会社 代表取締役。会社経営 20年目。翻訳・ローカライズ業界25年。翻訳・ローカライズ実績年間10,000件以上。
「言語コミュニケーションサービス」という領域で、主に翻訳/通訳/ローカライズ、インバウンド対応、コンテンツクリエイティブ、言語学習/研修サービスを提供している。