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目的を理解した翻訳プロセスの確立

翻訳品質を安定させるために、翻訳支援ツールを導入したり、最近では機械翻訳(NMT)などを使用したりと、様々な方法があります。

また ISO 17100 のような翻訳に関する国際規格を取得し、運用するという方法もあるでしょう。

ISO17100:翻訳サービス提供者認証のご案内

https://shinsaweb.jsa.or.jp/MS/Service/ISO17100

Certification of service providers

https://www.jsa.or.jp/en/en_about11/

今回は、翻訳の品質そのものというよりはそれらを支える翻訳プロセスについて考察します。

基本の翻訳プロセスはシンプル

翻訳という業務では、例えば自動車メーカーのような複雑な工程は必要ありません。もちろん複雑にしようと思えばいくらでもできますが、それは単純に非効率ですので(何か特別な事情がある限り)誰もやらないでしょう。

例えば、あるマニュアルを翻訳する場合、作業工程は大きく分けると以下の2つになります。

  1. 翻訳作業
  2. Web やデザイン、DTP、字幕編集、ローカライズなど

 

この 2 つが大きな工程となります。翻訳というのは、原文を読んで訳文を作る作業、Web は構築から運用、またデザインはクリエイティブですし、DTP レイアウト作業というのは、訳した文章を、元データに流し込み、原文と同じような見た目にそろえることを言います。

ここから考えるとき、翻訳支援ツール SDL TRADOS などを使用すると、1 と2 をシームレスに連携させることができます。

TRADOS によるマニュアル翻訳

また機械翻訳などでもこれらが実現できるものもあります。

いずれにしても、この2つのシンプルな作業工程(翻訳作業と後工程)を理解していれば、大枠を外すということは無いでしょう。

あえて言うなら、翻訳の前工程として「原文を書く時には翻訳を意識しておく」というくらいでしょう。ただ今回はテーマとそれるため割愛します。

「翻訳作業前に原稿を読まないのか?」という質問

 

ドキュメントの種類によってプロセスは増減する

上記はマニュアル翻訳の場合ですが、例えば、Web サイトローカライズはもう少し工程が複雑ですし、アプリやソフトウェアのローカライズも同様に複雑になってきます。

ローカライズとは

翻訳して Web を構築するには、どんな環境なのか、ドメインはどうする、SEO はどうする、広告は、日々の更新は?というように細分化されていきます。

Webサイト ローカライズ

 

さらに、最近では Youtube を代表とする動画ファイルに字幕をつけるというケースでも作業プロセスは増えていきます。

https://www.trivector.co.jp/movie/

上記の弊社のプランの場合でも、

  • テープ起こし
  • 翻訳
  • 字幕編集

という3つのプロセスが含まれています(最小構成です)。

ドキュメントの量によってプロセスは増減する

また、ドキュメントの量によってもプロセスは複雑化していきます。

例えば、1冊のマニュアルなら問題ないですが、10冊のマニュアルを同時に翻訳しなければならないとしたらどうでしょうか?その場合、パッと浮かぶだけで以下のような検討項目があります。

上記はあくまで一例で、まだまだ検討項目はあります。

納品形式に合わせたり、複数のドキュメントを同時に進めるために必要な作業工程があり、それらをつなげていくことで翻訳プロセスは完成します。

もちろん、ただ単に「翻訳だけしてくれればいい、テキストファイルで納品してくれればいい」というケースももちろんありますが、お客様からすれば、「まとめてお願いしたい」というニーズは根強く、それには様々なメリットがあることもご存知でしょう。

プロセスはシンプルだが、シンプルだからこそ影響を受ける

このように、翻訳の作業プロセスは目的地によって増減があるのですが、シンプルな設計である分、どこかで仕様変更があった場合や条件などが変わった場合には、すべての工程で影響を受けやすいとも言えます。

例えば上記の検討項目で、「翻訳者の人数を3人としていたが、指定したツールが使用できない翻訳者がいたため、急きょ2名体制にせざるを得なかった」としたら、どうなるのでしょうか?

考えられるのは

  • リソース(この場合はツール対応可能な翻訳者)の再確保
  • チェックスケジュール、後工程のスケジュールの再調整
  • 既存リソースへの担当振り分けのやり直し
  • 諸々の作業にかかるコスト増加
  • TM のメンテナンス

あたりでしょう。プロジェクトが複雑になればなるほど「翻訳」という全体の中の再調整と、それに影響を受ける後工程での再調整が必要になります。シンプルなプロセスだからこそ、どれかひとつが変更になると、すぐに、直接的に後のプロセスに影響を与えてしまうと言えます。

テクノロジーで防げるものと防げないもの

また、SDL TRADOS や WordPress などのように IT ツールやテクノロジーで便利になった側面も無視することはできません。

従来は、すべて手作業で翻訳しなければならなかったことも、TM によって随分と楽になりましたし、HTML+CSS で構築していた Web サイトも、Wordpress のような CMS なら比較的簡単に Web を構築できるようになりました。

これは本当に素晴らしいことであり、今後も IT を駆使したプロジェクト推進はさらにバージョンアップして便利になっていくことでしょう。

しかし、一方でいつまでも変わらないものがあります。それは「原文の変更」です。

例えば、まだ何も着手していない(翻訳していない)状態であれば、問題ないですが、作業がある程度進んでから、実は文章そのものが変更になったり、追加・削除されたりすることがあります。

いわゆる最上流の部分が変わってしまうので、そのあとに続くプロセスがすべて影響を受けてしまうのです。

まとめ

このようなことが無いように、キックオフミーティングではしっかりと仕様を固めておくこと、またその仕様から変わってしまったものは、どういう扱いにするのかを事前に決めておくことが重要であり、もっと言えば「できるだけコストを抑えながらも良い訳文、良いコンテンツを作りたい」という目的をお持ちの場合には、仕様をしっかりと決めておくこと、またそれ以前にきちんと翻訳会社と話し合っておくことが重要だと言えるでしょう。

つまり品質とは、1つ1つの作業の精度を高めるだけでなく、それらを統括するプロセスのマネジメントも同時に考えていかなければならないということです。


「翻訳作業前に原稿を読まないのか?」という質問

「原稿を読まないの?」という質問

以前、あるお客様に「翻訳する前に原稿読まないんですか?」と聞かれたことがあります。(実際にご発注いただく前のタイミングです)

最初はよく意味が分からなかったのですが、「翻訳する前に原稿を全部読んで、その時点で不明な点をつぶしておけば訳文の質も上がるだろう」という意図のようでした。

このコメントをいただいたとき、正直申し上げて大変驚きました。確かにこのお客様のおっしゃっていることは(品質を向上させるという点では)理解できるのですが、現実的にこれは難しいと言わざるを得ません。

そもそも、いったいどこからどこまでの作業を「翻訳」と呼べばいいのでしょうか。

翻訳作業とは何か

これはなかなか難しいのですが、そもそも、翻訳作業とはどんな作業なのでしょうか?あまりにも根本的過ぎますが、産業翻訳で言えば「原文にそって忠実に別の言語に置き換えていくこと」です。

Wikipedia:翻訳

翻訳(ほんやく)とは、Aの形で記録・表現されているものから、その意味するところに対応するBの形に翻案することである。

とあります。

ちなみに、弊社の「翻訳」という言葉の定義は以下のように定めています。

原文に忠実に、かつ原文の文意を正確および自然にターゲット言語に訳出すること

いずれにしても、翻訳という作業行為は「もともと存在する原文を使って、異なる言語に変換する作業」のことを指します。

この定義が共有されていれば、冒頭の「原稿を全部作業前に読まないのか?」という質問は現実的にかなり無理があることが理解できるでしょう。しかし共有されていない場合には、こういった発言が出てしまうのかもしれません。(実際今回は起きてしまったので定義の共有ができていなかった弊社にも落ち度はある)

翻訳作業前に原文を読むことができない、いくつかの理由

確かにこのお客様のおっしゃるとおり、「翻訳作業前にすべての原稿に目を通して疑問点を潰して質問し、説明を受けて作業を進める」ことができれば翻訳作業はスムースになると思われます。

ただ残念ながら現実的には難しいと言わざるを得ません。理由はいくつかあります。

理由①:原文自体の信頼性はお客様が確保するもの

この「原文すべてに目を通してほしい」という意図の中には、「原文が間違っているかもしれないからそれを読んで見つけてほしい」ということも含まれているようです。

そもそも原文の精度はお客様側で担保するものですから、そのミスを発見することを弊社で対応することは実質不可能でしょう。

理由②:原文を読む時間、質疑応答の時間とコストは誰が負担するのか

またコストと時間という点からも、非現実的と言わざるを得ません。弊社では信頼できる翻訳者さんをはじめとしたパートナーとともに仕事をしているため、すべてタダで作業することはできませんし、それを強制することもできません。そもそも売れっ子の翻訳者さんにはそんな時間はどこにもありません。また弊社内でもそのための作業をする時間はありません。

理由③:原文の分量が多い場合には、それだけで莫大な時間とコストがかかる

翻訳会社は、少量のものも大量のものも扱っています。そして、どんなドキュメントを翻訳するのかは実際の翻訳対象原稿を受け取ってみないと分かりません。

分量も内容も分からず、かつご発注すらいただいていないドキュメントを確認する必要性はありません。

このように、いくつもの理由が考えられますが、産業翻訳というジャンルで、納期も予算も制限されている中で「原文を全部読む」というのは現実的には不可能です。

その分のコストも、時間もお客様側で保証していただけるなら可能だと思いますが、それこそおかしな話で、お客様側でそこにコストをかけることはあり得ないでしょう。

それよりも、次にご紹介するように原文のレベルを上げてしまうのが最も簡単です。そしてそれはお客様ご自身でできることでもあるのです。

原文の質を向上させる方法

原文の品質を向上させる場合、以下のような方法があります。

方法①:原文をブラッシュアップさせる方法を最初から盛り込んでおく(ライターなどに依頼するのも手)

きちんとプロのテクニカルライターやコピーライター、編集者などをアサインし、翻訳も想定に入れて制作されることをお薦めします。

例えば、日本語原稿で考えるなら、日本語の場合の言い回しは多様ですのでそのドキュメントの持つ性質や目的、対象読者を想定して作成することで、すっきりとした原文を作ることができます。

文章校正や文法などがクリアな文章は、翻訳しやすいため品質も安定します。

方法②:用語やスタイル、TMなど、(信頼性の高い)流用できるものを準備する

参考資料がバラバラに沢山存在するのは困りますが、たったひとつでも信頼できる参考資料があれば翻訳作業時に大変助かります。

翻訳に役に立つ参考資料とは

方法③:誤解を与えるような文章をはじめから作らない

完成度の低い原文を使って翻訳しなければならない場合、品質向上はあり得ません。翻訳はあくまで翻訳であり、原文とは主従関係にあるため、訳文は原文以上の品質にはなりません。

仮に原文を飛び越えて翻訳してしまった場合、それらが合っている保証はないため、「誤訳、訳抜け」と言われてしまう可能性も高いでしょう。

まとめ

このように「原文の品質」をしっかり高めておくことが、読者への最大の配慮であり、ユーザビリティの向上であり、Web なら検索上位に表示される分かりやすい文章であり、翻訳しても誤解を招くことのない文章になるのではないでしょうか。

何でも「準備が7割」と言われますが、翻訳作業をはじめから想定しているなら、原文の準備(レベルやトーン&マナー、表記統一など)は、お客様側で行うのが最も効率が良くなります。

少なくとも「作業前に原文を全部読んでほしい」というリクエストにならないのは確かでしょう。

ぜひ原文のレベルを引き上げ、翻訳会社への依頼をしていただければ、翻訳会社としても良い意味でのプレッシャーになりますし、翻訳者としても真剣に取り組むベき原稿になると思います。


バックトランスレーション(逆翻訳)のメリットとデメリット

機械翻訳、ポストエディット、翻訳支援ツール、多くの MLV(マルチランゲージベンダー)やクラウド翻訳など、翻訳サービスには様々な形態が存在します。

翻訳の功と罪

 

そんな中、「バックトランスレーション」という手法があるのはあまり知られていません。日本語にすると「逆翻訳」と呼ばれます。(これに対し、通常の翻訳を「順翻訳」と呼ぶこともあります)

この「バックトランスレーション」というものは、いったいどういうものなのか、そしてメリット、デメリットや利用する際の判断基準について解説します。

バックトランスレーションとは何か

バックトランスレーションは、上述のように「逆翻訳」と言われますが、具体的には一度翻訳したものを使って、元の言語に翻訳しなおす作業のことを指します。

例えば、日本語から英語に翻訳する際、その訳文(英語)が原文(日本語)の意味をきちんととらえて翻訳されているかどうかを検証するために、訳文(英語)を日本語に翻訳します。

この訳文(英語)から原文(日本語)への翻訳プロセスをバックトランスレーションと言います。

バックトランスレーションの意味と目的

バックトランスレーションの意味や意義、その目的は何なのかを知っておく必要があります。この手法自体、翻訳プロジェクト、ローカライズプロジェクトの中でどういう位置づけのものかを把握する必要があります。

バックトランスレーションの目的は 3つほど挙げられます。

  • 訳文の正確性を確認するため
  • ターゲット言語が分からない場合のチェックやレビューのため
  • 翻訳としての妥当性、好みなどの恣意的なものかの見極めを行うため

それぞれ解説します。

バックトランスレーションの目的①:翻訳の正確性

翻訳の正確性を確認するためにバックトランスレーションを行うというのは、どういう意味でしょうか。これはつまり「日本語の単語が正しい英単語に置き換わっているか」という確認です。

また、(あえて挙げるなら)文法的にも「主語+目的語+述語」という日本語ならば、「主語+述語+目的語」という文法構造で英語が成立しているかどうかということでしょう。

バックトランスレーションの目的②:ターゲット言語でのチェックができない

例えば、日本語から中国語へ翻訳したケースがあるとします。発注した企業は、これを使ってビジネスを展開する訳ですが、翻訳会社から納品された中国語の訳文のチェックが社内で行うことができない場合、一度日本語に逆翻訳して、きちんと翻訳されているかどうかを確認するために使用されます。

バックトランスレーションの目的③:訳文の妥当性や好みなどの恣意性の見極め

①と重複しますが、こういう目的でバックトランスレーションを行うケースもあります。納品された訳文が妥当なものであるかということを検証しようとするわけですが、文章には「好み」があります。実際のところ、これらはバックトランスレーションをしても確認することはできません。あくまで翻訳後の言語の文章として好きか嫌いかという話だからです。

このように、一言でいえば、訳文としての「違和感」があるかどうかということを、バックトランスレーションによって見極めようとしているわけです。

しかし、残念ながらこれらはあまりうまく行きません。

バックトランスレーションのメリットとデメリット

ではなぜうまく行かないのでしょうか?

実は、厳密にはすべてがうまく行かないのではなく、上手く行くものとそうでないものが混在すると言えます。

バックトランスレーションのメリット

上述のように、様々な目的をもってバックトランスレーションを行う訳ですが、この中で上手く行くのは論文など専門性の高いドキュメントに限定されるでしょう。

「A という単語が B という訳語に正確に翻訳されているのか」を確認するために行なうためのバックトランスレーションは有効だと言えます。

バックトランスレーションのデメリット

しかし「ちゃんと翻訳されているかどうか」といった、(どちらかというと)表現力をお求めになる場合には、バックトランスレーションは不向きでしょう。Web サイトやプレスリリース等をバックトランスレーションしたところで恐らくほとんど意味はありません。

仮に、日本語→英語→日本語 というプロセスを辿った場合でも、実際に使用するのは英語であって、英語として自然なものか、意味が通る訳文かどうかを判断できないと意味がありません。

「日本語では大丈夫だった」という事実は、イコール「英語として大丈夫」ということにはならないからです。

また、言語によってもバックトランスレーション自体が意味を成さないケースもあります。韓国語のような表音文字などは、その文字自体に意味を持っていないため、バックトランスレーションをしてもほとんど意味がありません。

そういった点からも、第一義的には翻訳後の言語がターゲット言語なのですから、そのターゲット言語として訳文を評価、検証すべきでしょう。

バックトランスレーション使用時の注意点

これまで述べてきたように、バックトランスレーションの使い方は限定的とはいえ、その判断基準を持って行うことである一定の結果を得ることができます。その基準とは、「効果の出るドキュメントと効果の出ないドキュメントを理解する」ことです。

例えば、論文や特許書類など、単語の正確性が極端に求められる場合には、バックトランスレーションは有効です。決まった用語を使用なければ、ドキュメントの正確性が問われてしまうような場合などは、バックトランスレーションを使用することができます。

そういった基準を持たずに、どんなドキュメントでもバックトランスレーションをすることは、現場の混乱を招くばかりか、今後は「バックトランスレーションをしてもクレームにならない訳文を作る」ことが目的となり、逐語訳や直訳的な文章が増えてしまうかもしれません。その訳文が使われる場所や、対象読者のことが置いてけぼりになれば、伝えたいことも伝わりません。

まとめ

これまで述べてきましたが、バックトランスレーション自体を否定するものではありません。しかし、残念ながら限定的な使い方しかできないのもまた事実です。

そしてもしビジネスにおいて「正確な訳文を」「伝わる訳文を」と考えるのであれば、バックトランスレーションの前に以下の点に注意することがより有効だと思われます。

・バックトランスレーションする時間を取るより、その時間をしっかり最初の翻訳作業にあてる

・品質を気にするなら専門用語集やスタイル、事前のトレーニング、研修などを開催する

用語集構築・運用

・翻訳後にネイティブチェックのプロセスを増やす

定額ネイティブチェックプラン

いかがでしょうか。

バックトランスレーションを行う際には、これらの点を含めて正しい判断基準をもって行うようにしましょう。


翻訳、ローカライズ用語集

専門用語の意味と定義を正しく知ることの大切さ

ここでは、翻訳業界や翻訳会社、またローカライズ業界で一般的に使用されている専門用語についてご説明します。用語の意味を正しく知ることは、ご発注時にも、また翻訳会社との交渉時にも大変重要な役割を果たしてくれます。特に言葉の意味と定義について、それぞれすり合わせておかないと、同じ言葉でも違う解釈をされてしまうためトラブルの元となりかねません。そういったことを避けるためにも、翻訳・ローカライズ業界における用語の意味をきちんと理解しておきましょう。

映像翻訳(えいぞうほんやく)

映画、DVD や CD、ビデオといったエンタテイメント性の高いジャンルの翻訳を行う。通常、産業翻訳や出版翻訳とは一線を画しており、映像翻訳専門の翻訳会社が存在する。字幕翻訳とも呼ばれる。

エージェント(えーじぇんと)

いわゆる代理店だが翻訳会社とほぼ同義で使用されることが多い。一般的な翻訳会社の社内機能は、翻訳者はフリーランスとして登録してもらい、翻訳・ローカライズ作業前後に発生するマネジメント機能が中心となっている。 高品質の翻訳に仕上げ、顧客向けに翻訳・ローカライズサービスを提供する。

営業(えいぎょう)

翻訳の仕事を獲得するための重要なポジション。Webサイト(ホームページ)が営業マンの代わりとなっていることも多いが BtoB ではまだ対面での営業は捨てきれず、クライアントの重要な窓口として多岐に渡る翻訳・ローカライズの知識と交渉力が必要となる。

オペレーター(おぺれーたー)

翻訳作業後のレイアウト作業(体裁を整える作業)を行う。DTP と呼ばれる、FrameMaker(フレームメーカー)や InDesign(インデザイン)といったアプリケーションの知識に長けたスタッフが、翻訳者によって翻訳された訳文を元のデータに流し込み、体裁を整える。その後印刷工程に進むこともある。

機械翻訳(きかいほんやく)

人間が翻訳するのではなく、ソフトウェアが訳文を生成する。TRADOS(トラドス)などの翻訳支援ツールとは異なる。近年では、機械翻訳で訳文を作成し、それを翻訳者が編集する(ポストエディット)ような流れもある。自動翻訳と同義。

機械翻訳(自動翻訳)と翻訳支援ツール

 

キャプション(きゃぷしょん)

マニュアルや取扱説明書などのドキュメント中で、UI、スクリーンショット、図や画像の下にある説明文のこと。

グロッサリー(ぐろっさりー)

用語集、ターミノロジーの別名。ほぼ同義で使用される。翻訳・ローカライズ作業時に使用する大変重要な資料。元の言語と訳語がセットになっている。翻訳品質管理に欠かせないものであり、クライアント個別の用語の使い方が掲載されているため、翻訳会社、翻訳者はそれに準拠しなければならない。

校正(こうせい)

翻訳または DTP レイアウト作業などが指示通りに進められているかを確認すること。主にクライアントからのフィードバックがきちんと修正、反映されているかどうかを確認すること。英文の校正とは異なる。

 

ネイティブチェック

 

コーディネーター(こーでぃねーたー)

翻訳コーディネーター。翻訳会社に必要なポジションであり翻訳会社の要。主に登録翻訳者の窓口として、スケジュール管理からコスト管理、ときには品質管理、プロジェクト管理までを担当する。翻訳業界では様々な場面で中心となる役割。

コールアウト(こーるあうと)

マニュアル本文などでは図やイラストがあるが、そこから引き出されている線を指す。翻訳では、引き出し線に付随するテキストを対象として翻訳することが多い。

産業翻訳(さんぎょうほんやく)

あらゆる産業で発生するドキュメントを翻訳・ローカライズする。映像翻訳/字幕翻訳、出版翻訳、産業翻訳の中ではもっとも市場が大きいと言われる。ただし各分野、各ジャンルによって専門性が高いものが多いため、すべてを網羅することは難しく、各社で得意分野を持っていることが多い。

翻訳業界と翻訳会社

参考資料(さんこうしりょう)

翻訳作業にあたり参考になる資料のこと。主に原文と訳文のセットであることが多い。「どの言葉がどんな訳に変わっているのか」「どんな訳調が好まれるのか」などを確認することで、翻訳対象のドキュメントの方向性を絞ることができる。専門用語集やスタイルガイドもこの参考資料に含まれる。

翻訳に役に立つ参考資料とは

 

仕上がり枚数計算(しあがりまいすうけいさん)

「翻訳された後の言語で、何ページ程度に仕上がるのか」という予想計算方法。紙原稿しかなかった時代には重宝された計算方法ではあるが、現在はほとんど使用されない。原稿はすでにデータ化されていることが多く、文字数やワード数のカウントがすぐに正確に出るため、現在はほとんどが単価計算方式を採用している。

また仕上がり計算の場合には、予測に基づく計算のため、実際の仕上がった枚数に増減があることが多く、予算取りやスケジュールが決めづらいという側面も。

辞書(じしょ)

翻訳作業に必要な用語が記載されている。市販の辞書とは若干意味合いが異なる。特に顧客ごとで使い分ける必要がある用語などを記載することで、その製品特性やサービスの特長などを分かりやすく伝えることができる。用語集、ターミノロジー、グロッサリーなどと同義。

出版翻訳(しゅっぱんほんやく)

洋書(ジャンル問わず)などを日本語に翻訳し出版する。または日本語書籍を海外へ多言語に翻訳する。報酬は印税方式。また最近では日本の漫画やアニメ、ゲームといった文化(サブカルチャー)を海外へ向けて発信することも増えている。。

シングルランゲージベンダー(しんぐるらんげーじべんだー)

単数の言語を取り扱う翻訳会社やローカライズベンダーのこと。多くの翻訳会社がここに当てはまる。対して、多言語の翻訳・ローカライズサービスを行っているベンダーをマルチランゲージベンダー(MLV)と呼ぶ。

※参考:ま行の「マルチランゲージベンダー(MLV)」をご覧ください。

スタイルガイド(すたいるがいど)

翻訳やローカライズ作業時に必要なルール。主に表記ルールや訳し方などが記載されている。スタイルガイドに準拠して翻訳を進めるのも翻訳者の実力の 1 つ。大手外資系企業などから支給されるスタイルガイドはゆうに 100 ページ以上を超える場合もある。

スクリーンショット(すくりーんしょっと)

マニュアルや取扱説明書などのドキュメント内にある実際のソフトウェアの画面のこと。文字通りスクリーンショットであるため、通常はそのまま翻訳せずに使用するか、翻訳・ローカライズ後の言語に開発されたソフトウェアから同じ画面を持ってきて使用する。

多言語、他言語翻訳(たげんごほんやく)

さまざまな言語へ翻訳したりローカライズすること。日本では主に、日本語から英語、中国語(簡体字/繁体字)、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語などへ展開することを指す。大手企業の場合には、10言語、20言語同時展開という場合もある。

多言語翻訳

ターミノロジー(たーみのろじー)

用語集、グロッサリーの別名。ほぼ同義で使用される。

単価計算(たんかけいさん)

原文の文字数やワード数をベースに金額を算出する計算方法。英語から日本語への翻訳では英単語数(ワード数)、日本語から英語への翻訳では日本語の文字数がベースとなる。現在はほとんどの翻訳の見積もりがこの方法に基づいて計算される。

チェッカー(ちぇっかー)

翻訳者から納品された訳文をチェックする役割。誤訳、訳抜けがないか、スタイルガイドに準拠しているか、クライアントからのその他の指示に準拠しているかなどを確認する。言わば、翻訳の品質管理の最終工程にあたる。レビューアとも呼ばれる。

DTP レイアウト(でぃーてぃーぴーれいあうと)

翻訳作業後の訳文をデータに流し込んで、体裁(見た目)を整えていくこと。DeskTop Publishing の頭文字。DTP オペレーターが行う。MS-OFFICE や Adobe FrameMaker(フレームメーカー)、InDesign(インデザイン)、QuarkXpress、Illustrator、Photoshop、Robohelp、MadCap など取り扱うアプリケーションは多岐にわたる。

テクニカルライティング(てくにかるらいてぃんぐ)

原稿を作成すること。製品の技術的仕様や特長など、様々な情報を盛り込む。主にマニュアル(取扱説明書)などを作成することを指す。コピーライティングとは異なる。

テクニカルライティング

テクニカルチェック(てくにかるちぇっく)

翻訳されたマニュアルや取扱説明書の内容が技術的な側面から正しいかどうかを判断するためのチェック作業。対義語としてリンギスティックチェックがある。

ドキュメント(どきゅめんと)

マニュアル、取扱説明書、カタログ、プレスリリース、契約書などの翻訳・ローカライズ対象原稿のことを指す。Webサイトローカライズ(ホームページ翻訳)やソフトウェアローカライズの場合には、その製品やサービスそのもののことを指す。

ネイティブチェック(ねいてぃぶちぇっく)

ネイティブスピーカーによるチェック作業のこと。日本でネイティブといえば多くの場合は、日本語から英語になるため、英語圏の人を想像することが多い。プルーフリード、英文校正、英文校訂、英文校閲などもほぼ同義。英文添削は異なる。

ネイティブチェック

プロジェクトマネージャ(ぷろじぇくとまねーじゃ)

大型の翻訳・ローカライズプロジェクトや長期の翻訳・ローカライズプロジェクトを管理するマネージャ。数万円から数千万円までプロジェクトサイズは様々ではあるが、すべてをプロジェクトとして捉え、見積もりから納品までを推進する役割。

翻訳支援ツール(ほんやくしえんつーる)

翻訳者が翻訳作業を行う際に使用する。主にマニュアル翻訳やWebサイトローカライズ(ホームページ翻訳)、ホームページ翻訳では、SDL TRADOS(トラドス)をはじめとして多くの翻訳支援ツールが使用される。機械翻訳や自動翻訳とは異なる。

TRADOS によるマニュアル翻訳

翻訳者(ほんやくしゃ)

翻訳作業を行うポジション。主にフリーランスが多く、翻訳会社や翻訳エージェントに登録し、仕事を請け行う。個人(SOHO)が多く、自宅で作業を行うのが一般的。個人事業主であるため、仕事の 1 から 10 までを自分で管理していく能力が求められる。高い専門性と翻訳言語の高い表現力が求められる。花形の職業ではあるが日々の勉強も必要になる上、強い責任感と向上心等も必須。

翻訳会社(ほんやくがいしゃ)

営業スタッフ、プロジェクトマネージャ、翻訳コーディネーター、翻訳チェッカーなどで構成される。大小さまざまな翻訳会社があり、それぞれに特色がある。

翻訳業界と翻訳会社

フィードバック(ふぃーどばっく)

クライアントからの訳文への修正指示のこと。最終的にどんな訳文になったのか、どんな訳文がクライアントの好みなのかが具体的に分かる。具体的でないフィードバックの場合は、改善のための対策が打ちにくいため、翻訳の品質向上にあたって遠回りになってしまうことがある。

翻訳、ローカライズのフィードバックの重要性

フォント(ふぉんと)

文字の種類。言語が異なると同じフォントサイズでも、見た目が変わってくるため適切なフォント、適切なフォントサイズに変更する必要がある。Webサイト(ホームページ)の制作やローカライズでは、翻訳、ローカライズ後のフォントに何を選択するかでデザインにまで影響を及ぼす。フォントデザインは見過ごしがちなポイントではあるが、ユーザに与える印象が大きいため、慎重に利用する必要がある。

ページバイページ(ぺーじばいぺーじ)

DTP 作業を行う際に原文どおりのページ構成で翻訳後のドキュメントを整えること。異なる言語に翻訳されると、翻訳された文章は原文と比較して長くなる傾向にある。そのため、原文で 1 ページ目に記載されていた情報が、訳文では、1 ページ目に収まらず、2 ページ目・・・と続いてしまうことがある。この場合、最終的なページ数などもさることながら見た目も変わってしまうことがあるため、フォントや行間などの調整を行うことによって原文と同じような体裁を保つ必要がある。

ホームページの翻訳

Webサイトローカライズとも呼ぶ。ある言語で書かれた ホームページを、使用する国や地域の言語に置き換えること。またできればターゲットの国や地域の商習慣や文化、伝統を意識して設計、ローカライズすることが望ましい。

Webサイト ローカライズ

マルチランゲージベンダー(MLV)(まるちらんげーじべんだー)

シングルランゲージベンダー(SLV)の対義語。多言語の翻訳・ローカライズサービスを取り扱う。通常、各国に支社を持っており、支社同士が連携することで大規模プロジェクトを進めることができる。

※参考:さ行の「シングルランゲージベンダー(SLV)」をご覧ください。

無料翻訳トライアル(むりょうほんやくとらいある)

クライアントが翻訳会社やローカライズベンダーを選定するために行う。主に翻訳の品質を見極めるものだが、トライアル時の翻訳の品質を信じて発注先を決定するためトライアルの品質だけが高く、実際の仕事は別の翻訳者が担当するという問題も起きている。

無料翻訳トライアル

 

また、フリーランスの翻訳者が翻訳会社に登録するために実施されるトライアルも無償で行われる。

ユーザーインターフェース(UI)(ゆーざーいんたーふぇーす)

ソフトウェアやアプリなどに出現するメニュー名などのこと。ユーザビリティを考える上で、UI や UX というのは非常に重要で、使い勝手が悪かったり、直観的な操作ができないと、ユーザは離れてしまう傾向が高い。そうならないために UI を使いやすくし、また理解できるように翻訳しなければならない。

有償翻訳トライアル(ゆうしょうほんやくとらいある)

翻訳会社がそれぞれ規定する無料翻訳トライアルの規定の分量より多い場合、クライアントの了解の上、定められた範囲を有償で行うことがある。

用語集(ようごしゅう)

ターミノロジー、グロッサリーの別名。ほぼ同義で使用される。

リライト(りらいと)

翻訳作業後にさらに文章を読みやすくするため、ブラッシュアップする作業。産業翻訳の場合は原文から離れないことが大前提のルールとして存在するため、クライアント側で手を加えることが多い。

リライト・編集

リンギスティックチェック(りんぎすてぃっくちぇっく)

翻訳者より納品された翻訳の表現、表記を中心にチェックすること。テクニカルチェックが対義語。

レビューア(れびゅーあ)

チェッカーと同義語。翻訳者から納品された訳文をチェックする役割。誤訳、訳抜けがないか、スタイルガイドに準拠しているか、クライアントからのその他の指示に準拠しているかなどを確認する。翻訳・ローカライズの品質管理の最終工程。

ローカライズ、ローカリゼーション(ろーからいず、ろーかりぜーしょん)

ソフトウェアや Webサイト(ホームページ)、マニュアル、取扱説明書、オンラインヘルプなど、製品・サービスを文化・習慣を考慮に入れて現地語化を行うこと。ローカライズを行うことで各国の市場に適切に対応したマーケティング戦略を可能にする。

ローカライズとは

 

ローカライズ、ローカリゼーションベンダー(ろーからいず、ろーかりぜーしょんべんだー)

ローカライズサービスを提供する翻訳会社のこと。各国に支社を持ち、支社間で大規模プロジェクトを推進する。

ワード数

英語から日本語へ翻訳する際に、元原稿(この場合は英語)の単語数のことを指す。このワード数に基づいて翻訳の見積もり金額を算出するのが一般的。紙原稿しかない、スキャンした原稿しかない、などの場合には、従来の「仕上がり枚数計算」方式を使用するが、データが存在する場合には、ワード数を数えて算出する。

ワンソースマルチユース

1つのアプリケーションから複数の異なる使用用途に展開すること。例えば、FrameMaker(フレームメーカー)で作成されたマニュアルを翻訳し、FrameMaker(フレームメーカー)の日本語版を作るだけではなく、そこから Webworks Publisher 等で HTML 形式に変換し、さらには RoboHelp や MadCap 等でコンパイルを行い、HTML Help を作成し使用するなど、ユーザに対して様々なタッチポイントを増やすことができる。

1×1 ソリューション

Adobe Acrobat(アドビ アクロバット)

アドビシステムズ社の製品。PDF ファイル形式が閲覧可能になる。翻訳業界では、PDF 形式でのファイルのやり取りが多く、コメント機能などの多機能性によって仕事のスピードが上がる。

Adobe FrameMaker(フレームメーカー)

アドビシステムズ社の製品。翻訳業界では、主にマニュアルや取扱説明書の制作で使用されることが多い。海外本社にて FrameMaker(フレームメーカー)によって制作され、SDL TRADOS(トラドス)を併用して日本語版マニュアルを完成させるのが主流となっている。FrameMaker(フレームメーカー)では索引機能や book 機能、コンディショナルテキスト、インセットテキストなどの高機能が搭載されているため、大量のボリュームのドキュメント(特にマニュアルや取扱説明書)を制作するのに向いている。 FrameMaker(フレームメーカー)+ TRADOS(トラドス)によるマニュアル翻訳プロセスは非常に有名で一般的。

FrameMaker(フレームメーカー)の機能と特長

 

TRADOS+FrameMaker

Adobe InDesign(インデザイン)

アドビシステムズ社の製品。大量のドキュメント制作のアプリケーションは、FrameMaker(フレームメーカー)から InDesign(インデザイン) へ移行すると言われている。実際に最近では InDesign(インデザイン)で作成されているドキュメントが増加傾向にあるため、今後は InDesign(インデザイン)が中心になると予想される。

TRADOS + InDesign

Alchemy CATALYST(アルケミー カタリスト)

ローカライズツール。主に UI(ユーザインタフェース)を翻訳する際に使用する。シンプルな操作でリソースファイルのほか、様々なファイル形式に対応している。インタラクティブな操作性により直感的に使用可能だが新しいバージョンの SDL TRADOS(トラドス)等ではカタリストを使用せずに UI(ユーザインタフェース)を翻訳することもできるようになっているため、市場シェアの変化が発生している。

Arbortext EPIC(エピック)

XML エディタ。XML/SGML コンテンツを強力にサポートする。

QA(Quality Assurance)(クォリティ アシュアランス)

翻訳やローカライズの品質チェックのこと。プロジェクト単位での仕事では、品質チェック工程も重要なプロセスになる。「どうチェックするか」「何をチェックするか」「誰がチェックするか」などきちんと決定し実行することで、より高い効果を発揮する。

Madcap(マッドキャップ)

MadCap Software 社。Robohelp の開発スタッフが設計、開発。Macromedia、Adobe による Robohelp の買収の経緯から、あらたに設計された Madcap Flare は、Robohelp のプロジェクトを利用できるため、Robohelp からの移行もスムースで大変親和性も高い。

 

ヘルプファイル翻訳

RoboHelp(ロボヘルプ)

アドビシステムズ社の製品。WebHelp や HTMLHelp などの様々なヘルプファイルを作成、コンパイルすることができる。ドキュメントの翻訳に代わり、ヘルプファイルで顧客への情報提供を行う場合に適している。

ヘルプファイル翻訳

SDL TRADOS(トラドス)

TRADOS(トラドス)社が SDL 社に買収されたことにより、SDL TRADOS (トラドス)として名称が変更。翻訳業界ではデファクトスタンダードとなっている翻訳支援ツール。TRADOS(トラドス)は、FrameMaker(フレームメーカー)や InDesign(インデザイン)、Word や HTML などの様々なアプリケーションに対応している。FrameMaker(フレームメーカー)や InDesign(インデザイン)で作成されたマニュアル翻訳など、大量のボリュームを処理するときに効果を発揮する。

TRADOS によるマニュアル翻訳

SDL TRADOS(トラドス)の解析アルゴリズム

Translation Memory(トランスレーション メモリ)

TRADOS(トラドス) を使用して生成される原文と訳文がセットになって取り込まれるデータベース。バージョンアップ時に、旧版とマッチング(解析作業)させることで、流用可能なものとそうでないものに分けることができる。

TM の精度について

WebWorks Publisher(ウェブワークス パブリッシャー)

FrameMaker(フレームメーカー)形式のファイルを HTML 形式へ変換するためのツール。同一内容のドキュメントをユーザの使用用途に合わせて様々なファイル形式で提供する「ワンソース マルチユース」というコンセプトが根底に流れる。

XML(エックスエムエル)

マークアップ言語。データの構造などを記述するための言語のこと。XML 形式でのドキュメント管理も増加傾向にあり、XML ベースでの翻訳・ローカライズ対応も迫られている。


用語集と木こりのジレンマ

glossary

翻訳会社から見ると、翻訳業務に欠かせないのが用語集ですが、お客様の立場から見ると意外と軽視されているケースが見受けられます。

用語集があるのと無いのとでは品質に差が出てしまうにも関わらず、その重要性が浸透しない理由はいくつか考えられます。今回は、この専門用語集について考察したいと思います。

そもそも「専門用語」とは何かが曖昧

まず初めに「専門用語」というのはどこからを指すのでしょうか。その境界はなかなか見極めが難しい場合があります。

例えば、医療や医薬の分野には多くの専門用語が登場します。以下の例で考えてみましょう。

日本語英語
抗体Antibody
アレルギーAllergy
手術Operation
妊娠Pregnant

ひとつ目の「抗体」は、医療用語(専門用語)というのは何となく納得できますが、では2つ目の「アレルギー」はどうでしょうか?日常的に使用している用語ですが、実はこれも医療用語です。「手術」も病院ではよく聞きますし、一般人でも使いますが、医療用語です。「妊娠」という言葉も日常会話でも登場する言葉ではありますが、医療用語です。

これらはすべて医療用語なので、専門用語としても間違いではありません。

一般の人が「専門用語」として感じるのか、もしくは「一般用語」として感じるのかは、その人の持つ背景知識などにも左右されます。逆に言えば、ある特定の分野の専門家が「これは一般用語だ」と思い込んでいたら、それは用語集には入らないことになります。

これは、自分の常識が他人の常識とは限らないという話に似ています。

また、仮に市販の用語辞書に掲載されていれば専門用語であり、そうでなければ専門用語ではないのでしょうか。しかし、こういう基準で考えるのもおかしな話です。

つまり、専門用語かどうかの線引きは、ある種、非常に曖昧だと言えます。

これが用語集の価値を認めにくい一つ目の要因です。

実際の用語の使い方が曖昧

多くのお客様と接していて感じるのは「お客様ごとに用語の使い方は違う」ということです。これは10年以上前は考えられないことでした。

例を挙げてみましょう。

例えば IT 専門用語で “Virtual” という言葉があります。この翻訳について、

  • A 社:「バーチャル」
  • B 社:「仮想」

と訳語が異なるケースがあります。意味は同じでも、表記が異なっているわけです。10年以上前の IT 業界なら業界内で統一できていましたが、テクノロジーの発達や各社の差別化要因としても「ウチは”仮想”ではなく、”バーチャル”を使っている」という企業が増えています。

また、別のケースとして、同じ単語であっても状況によって訳し分けなければならないこともあります。この場合は用語集にどこまで登録するのかといったことも検討しなくてはなりません。

これらの曖昧さも用語集の価値が伝わりにくい要因となっています。

それでも用語集がある方がいい

これまで述べてきたように、曖昧さが引き起こす原因はあるとはいえ、それでも用語集は構築したほうがいいというのが弊社の見解です。

仮に曖昧さを排除しきれなかったとしても、それを補って余りある効果を得ることができるからです。翻訳作業時に複数の翻訳者で対応しなければならない場合には、用語集があれば、統一が容易になります。

また様々なドキュメントがあっても、用語が統一されていればブランディングの観点からもイメージアップ、ユーザビリティアップにつながります。

もし、用語集がなければ何が起きるのでしょうか?

  • 企業のドキュメントの統一が図れない(=ブランディングの統一ができない)
  • 全ドキュメントでの統一はおろか、自分が担当するドキュメントすら統一できない

大した影響はないとお考えでしょうか?それともこういった部分のバラつきが読み手に与える印象は決して小さいものではないと思うでしょうか。

この判断が貴社のドキュメントの品質を変えるとすればいかがでしょうか。

翻訳業界の用語集

ちなみに、弊社でも翻訳業界用語についてまとめています。

翻訳、ローカライズ用語集

 

翻訳やローカライズ業務で頻出する用語とその意味をまとめてありますが、「どこから掲載するか」という上記の問題は孕んだままです。しかし、それでも上述のように単語の意味、定義を共有しておくことの方が大きなメリットがあると考えています。

本当は自社で作る方がいい

このように、用語集があるとあらゆる貴社のドキュメントに使用できるようになります。それはつまり、貴社の資産になるということです。

私たちがお伝えしたいのはまさにこの点であり、そういう観点から考えると、本来は貴社で構築していくのがもっとも確実であると言えます。

用語集と木こりのジレンマ

このように、用語集の構築に関してお伝えをしても、「そうはいってもなかなか時間を取れない」というお話もお伺いします。そこで弊社では、「用語集構築プラン」をご用意しております。

 

用語集構築・運用

 

このプランをご利用いただき、その後のドキュメント制作をスムースにするかどうかは、「木こりのジレンマ」と似ています。

木こりのジレンマとは

ある日、旅人が森の中を歩いていると、一人の木こりに出会った。その木こりは、一生懸命、木を切っていた。旅人はそんな彼を見ていた。
旅人は、その木を切る姿を見ていて、木こりが一所懸命切っている割には木がなかなか切れないのを不思議に思った。そこで彼ののこぎりを見ると、随分と刃こぼれが目立っていた。

そこで、旅人は「木こりさん、そののこぎりは随分刃こぼれしているようだ。のこぎりの刃を研ぎ直してから、あらためて木を切ったらどうだろうか」と言った。

ところが木こりは旅人に向かってこう言った。

「あなたの忠告は非常にありがたいが、私は今、木を切るのにとても忙しく、それどころではないのです」

そして木こりはその刃こぼれしたのこぎりを使って木を切り続けた。

もし、この「のこぎりの刃」が貴社にとっての「専門用語集」だとしたら、バラバラのまま翻訳作業を続けたところで品質アップにはなりません。

一度用語集を作ってみる。そしてそれを使って展開することで、翻訳作業もレビュー作業ももっとスムースになるとしたら、専門用語は価値があると言えるのではないでしょうか。

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