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「品質と価格は比例する」と言い切ったお客様の話

ある外資系企業のお客様がおっしゃっていました。

「私は品質と価格は比例すると思っています。だから価格が上がるのは問題ありません」

という発言をされました。(それまでの文脈は割愛)

もちろんですが、その通りと感じましたが、こういったことをなかなか面と向かって言うことも少ないのではないでしょうか。

また、実際にはそれが分かっていても実行できないケースや状況が(残念ながら)存在するのも事実でしょう。「そんなことは綺麗ごとだ」という意見もあります。

それでもハッキリと断定したこのご担当者様には、ご自身のお仕事に対する非常に強いポリシーを感じましたし、弊社をパートナーとして見ていただいているのだという良い意味でのプレッシャーを受けました。とにかく安ければいいという風潮もある中で、実際には胸が熱くなるようなシーンもありました。このお客様の言葉をお借りして、品質が高ければ価格が高いのは当然であること、またその逆も然りであることを改めて考えてみたいと思います。

「品質」とは何か

価格が品質によって決まるとするならば、まず先に「品質の定義」が必要となります。

※すべての業界、すべての企業で品質の定義をしているでしょうから、その解釈には多くのパターンがあると考えられます。

弊社の場合、品質とは、お客様が「望んでいるとおりのものを得る」状態のことを指しており、以下のコンテンツでより詳細の説明(定義)をしておりますのでご確認ください。

翻訳、ローカライズの品質とは

さらに、これらの品質を確保するために弊社では「良い品質の翻訳とは」というページも作成、公開しておりますので合わせてご覧ください。

トライベクトルが考える「良い翻訳」とは|翻訳会社トライベクトル

※「品質」は訳文だけの話ではなく、対応品質なども含まれています。

※今回のご担当者様の発言は、この「ご担当者様がご希望のモノやサービス」通りに、または「希望以上のモノやサービス」をお届けしたあとのご感想です。

「価格」よりも「価値」を考える

品質が高ければ後から価格があがりますということを言いたい訳ではありません。またそういうケースはかなりレアでしょう(詳細は伏せますが、今回はそういうことが可能なお仕事だったというだけ)。

よく「価格」ではなく「価値」を考えなさいと言われます。価値とは何でしょうか。あまり難しく考えるよりも、自分がモノやサービスを購入することを想像してみます。

モノやサービスを購入する決断をするときには価格を見ます。しかし、価格を見る以上に見ているものがあります。

「価格に納得できるとき」というのは、「これを買ったら自分の課題や悩みが解決できるかも」と思うときです。価格の向こう側にある「自分が得られる価値」を想像するのです。

そして実際にそれが解決したら「ああ、良い買い物をした」と思うのです。逆に「期待外れ」だった場合には二度と購入されることはありません。

つまり、買い手にとっては「そのモノやサービスの価値を見出すことが大切」ということですし、売り手にとっては正しく価値を伝えることが大事になってきます。

「迷う理由が値段なら買え、買う理由が金額ならやめとけ」

という言葉もあります。つまり、値段(価格)を基準にして判断してはいけないという意味です。「安いから買う、高いから買わない」のではなく、「自社にとって価値があるかどうか=自社が課題解決できるかどうか」が基準であるべきということでしょう。

「品質=お客様にとっての価値が高い=課題解決できる」であるならそれは当然買うし、(仮に高かったとしても)買いますということです。これは誰しも経験があるでしょう。

価格を考えるのではなく価値を考えるというのはこういうことです。

「品質が高い」は「価値が高い」

このように考えると、「品質が高い」という言葉は「お客様にとっての価値が高い」という意味になります。例えば、これを無視して「自分が作ったものは最高だ」と言ったところで、それはビジネスではあまり意味がありません。

ビジネスにおけるプロフェッショナルは、お客さまの課題をしっかりとヒアリングし、それについての改善案を提案し、共に伴走する人のことです。

医者ならばきちんと患者さんの病状を把握し、できる限り相手に負担をかけず、時には激励したり、寄り添ったりしながら最適と思われる治療方針を出し、伴走していくのと同じでしょう。

腹痛を訴えている患者さんに何も確認せずに「この薬を飲みなさい」という医者はいません。しっかりと相手の話を聞き、かつプロとしての視点から改善方法を模索しつつ、提案を繰り返していくからこそ患者さんは安心して任せることができるのです。もちろん、病状からの回復が最大の価値であることは言うまでもありませんが、そこに価値があるのです。

今回の外資系企業の担当者様はこれらの基本的な、でもとても大切な構造をしっかりと理解した上で発言をされていらっしゃいました。だからこそ非常に納得感が強かったわけです。

「価値」はどういう人や企業と付き合うかの基準にもなる

一転して、数年前にこのような記事を書きました。

「翻訳なんて誰がやっても一緒」だが、誰もが「言葉に魂を込めている」ものを求めている

こちらのエピソードも大変驚いたのでよく覚えていますが、今回の担当者さんは、この記事に登場する部長さんとはまったく真逆の発想だと言えます。

ただ、よく考えると要求水準は今回のお客様のほうが高いのです。

なぜなら「私たちが要求する品質のものを出してください。それができれば価格が上がるのは問題ないが、逆にその品質が出せないのなら価格は下がりますよ」と言っているのと同じことだからです。またもっと言えば「価値がないなら取引自体がありませんよ」ということでしょう。

(もしかしたら、一見厳しそうに見えた以前のお客様の方が「翻訳なんて誰がやっても一緒」と思っている分、品質への評価基準がブレている可能性があるため、あまり細かいことを言わないのかもしれません)

いずれにせよ、弊社の提供する言語サービスについてある一定の価値を見出してくださっているお客様である以上、弊社も毎回真剣勝負でお仕事をしています。

重要なのは「価格優先なのか、価値優先なのか、それは担当者 個人としての考えなのか、企業としての考えなのか」といった様々な要素がある中で、「何を課題として持っていて、どういう解決策がお客様にとってベストなのだろうか」ということをもっと真剣に考え、提案しなければならないですし、こういった考え方を持つためには、そもそも自分たちが何を大切にしたいと思っているのか、どう有りたいと思っているのかといった根本の思想が問われているのだということです。

どういった企業と取引をするのか/付き合っていくのかは、まさにこの部分(価値基準)に根差すものであるべきです。そうでなければ「翻訳なんて、通訳なんて、英会話なんて、誰がやっても一緒でしょ」という言葉に流されてしまいます。

まとめ

お客様の要求水準を満たす/超えるために、様々な側面からサービス品質を上げてお客様の課題を解決しようとする(価値)という行動は、長期的に見てお客様との信頼関係をより強固なものにし、また仕事の拡大を促す大きなドライバーになります。

このように(顧客にとって)価値があると感じるものにはそれなりの理由があるということです。そしてそれを無視して「誰がやっても一緒」なんてことはあり得ないということでしょう。

これまで以上にもっともっと努力しなければならない、身の引き締まる思いでした。

 

 


動画による翻訳・通訳・ローカライズ解説

Youtube 動画による「失敗しない」翻訳・通訳・ローカライズサービスの選び方や発注方法などについてお伝えしております。

No.1 翻訳業界の構造とは

【翻訳 発注担当者向け】翻訳業界の構造とは?

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No.2 字幕翻訳のポイントとは

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No.3 翻訳会社の3つのカテゴリーとは

【翻訳 発注担当者向け】発注前に知っておきたい 翻訳会社の3つのカテゴリーとは

No.4 翻訳発注時に失敗しない 3つのポイント

【翻訳 発注担当者向け】翻訳発注時に失敗しない 3つのポイント


マーケティング担当者に必須の「マーケティング翻訳」とは

近年、翻訳業界の大きなトレンドとして、「マーケティング翻訳」や「クリエイティブ翻訳」と呼ばれるサービスがあります。

今回はこれらについて解説します。

「マーケティング翻訳」とは何か

まず初めに「マーケティング翻訳」という言葉の定義をする必要があります。

マーケティング翻訳とは、企業の Web サイトや SNS、パンフレットやカタログ、プレゼン資料などのマーケティングドキュメント類についての翻訳のことです。

これらのドキュメントは、概してメッセージ性が高く、読み手を強く意識したものと言えるため、それに適した翻訳をする必要があります。

マーケティング翻訳の目的

実は、「マーケティング翻訳」自体は昔から存在していましたが、ここ数年、急激にニーズが高まってきました。その理由として考えられるのは、「クライアントが要求する訳文レベルが徐々に高くなってきたから」と言えるでしょう。

またコロナウィルスの蔓延により、DX に代表されるようなあらゆるビジネスでのデジタルシフトやオンライン化が加速しています。そのためユーザに「読んでもらえるコンテンツ」を提供しなければならないという強いニーズが多くなっていると考えられます。

一例として、Web サイトの翻訳を行う場合には、Google の検索結果で上位表示させるために、様々な観点から質の高い文章を作らなければなりません。

なぜならその検索結果が直接集客に結びつき、ビジネスの業績に反映されるからです。

またホワイトペーパーや導入事例などは Web サイトから申し込みを受け付け良質のリードをとるためのツールですが、その目的達成のためには、まず第一に読み手の役に立つコンテンツと、それを実現するための訳文の読みやすさが重要視されるようになりました。

このように企業活動の中で利益の最大化を図るための要素のひとつとして、「マーケティング翻訳」というものが注目されるようになってきました。

仮に英語から日本語の翻訳の場合、これまでの「原文に忠実に翻訳する」という産業翻訳のルールから離れ、「より魅力的な文章(日本語)として翻訳する」という部分が大きな比重を占めるようになります。

繰り返しになりますが、これらが求められる理由としては、企業が提供するサービスや、製品などのアピールをするため、集客のためです。では実際にマーケティング翻訳のポイントを説明します。

マーケティング翻訳は大きく2つに分けられる

マーケティング翻訳は、大きく2つに分けることができます。

1. タイトルや見出しの翻訳

文字通り、タイトルや見出しの翻訳ですが、短い文章のため言葉の選定が非常に難しくなります。

なぜなら、原文が制作されるプロセスにおいて非常に多くの背景情報や目的設定、ストーリーがあるはずでそれらをすべて包括してベストと思われる言葉を選択し、作られているため、当然のごとく翻訳する際にもそれと同じプロセスを理解して訳文を作らなくてはなりません。原文の表面的な部分だけを捕まえて翻訳したところで、薄っぺらな訳文になってしまいます。背景情報の理解が大切になります。「どんな意図でこのタイトルになっているのか」「なぜこの単語を選択したのか」などを把握して翻訳します。

2. コンテンツの翻訳

タイトルや見出しのあとにくる本文の翻訳では、正確で読みやすく、そして読者にしっかりと意図が伝わる文章でなければなりません。

例えば「間違ってないから問題ないでしょう」というスタンスで訳文を作ってしまうと、それはマーケティング翻訳とは呼べません。「誤解の生まれない表現」だけでなく「魅力的な表現」も必要となります。

マーケティング翻訳をしないと Web は効果が出ない

この2つのタイプの翻訳が求められる具体的な例としては、Web サイトの翻訳が挙げられます。前述のように、仮に翻訳でなくとも、Google の検察結果で上位表示される文章というのはどれも非常に読みやすく、また役に立つ内容になっているのはご存知でしょう。

「検索結果画面で惹きつけられるタイトルで、meta description 部分で内容が簡潔に書いてある」という状況があれば、ユーザはクリックして読もうと思います。

繰り返しになりますが、そういった点で「Web サイトをどう翻訳するのか?」というのは、企業の戦略上、非常に重要な部分を占めていると言えますし、これからもその比重はますます大きくなります。

「翻訳」という範疇の中での創造性

しかし「翻訳」という範囲でどこまでクリエイティブに訴求力のある訳文を作るのか、原文から離れる必要がある場合、どこまで離れても許されるのか、といった線引きはかなり難易度が高いテーマです。実際、翻訳業界の中でも「これは普通の翻訳だ」「これはマーケティング翻訳ではない」という明確な線引きがあるわけではありません。

そもそも言葉は生き物であること、読者の背景知識や文化、価値観、習慣など様々な要素によって、同じ文章で評価が割れてしまうことは往々にして起きるからです。

原文を横に置かないと理解できない訳文は、あまりにも逐語訳的なのかもしれませんし、とはいえ「そんな所まで言い切っていいのか」という訳文では、原文の意図を本当に踏襲しているのか分からないということもあるでしょう。

この線引き、さじ加減のバランスを取りながら、クリエイティブに翻訳することでマーケティング向けの翻訳が生まれるのです。こう考えていくと言語の曖昧さの残る範疇の中でマーケティング翻訳を行う難しさというのが想像しやすいかと思います。

クリエイティブ翻訳との違い

「マーケティング翻訳」と似た言葉に「クリエイティブ翻訳」という言葉がありますが、ほぼ同義語です。翻訳業界では「クリエイティブ翻訳」「TransCreation」で通じます。

ちなみに、弊社では「マーケティング翻訳」を以下のように定義しています。

読み物など広告系の原文の翻訳の際に、原文にとらわれず、魅力的な訴求力の強い訳文を訳出すること

としています。弊社ではコンテンツ向けのマーケティング翻訳と Twitter や Facebook などの SNS 向けのマーケティング翻訳を多く手掛けています。

コンテンツ向けクリエイティブ翻訳プラン

 

SNS 向けクリエイティブ翻訳プラン

従来の翻訳との違い

お客様からはマーケティング翻訳は従来の翻訳とはどう違うのか、という質問を受けることもありますが、一言でいえば「翻訳以上、ライティング未満」と言えるでしょう。

これは以下の図で説明することができます。

 

この図は、弊社のクリエイティブ翻訳プランのページで使用しているものですが、これまでの翻訳は、ドキュメントの種類によって多少の訳し方の違いはあれ、基本的に「原文に忠実に翻訳する」ことが重要視されていました。

※以下の「翻訳ドキュメントマップ」ではドキュメントによって訳し方が違う(求められる方向性が違う)という点を可視化したものです。

翻訳ドキュメントマップ

このように、従来の翻訳とマーケティング翻訳の違いはどこまで表現するか=どこまでの訴求力を持たせるかという点でしょう。

翻訳業界の 4つの勢力

このように、マーケティング翻訳やクリエイティブ翻訳は、従来の翻訳とは違う訳ですが、冒頭のようにあらゆるビジネスがオンラインへシフトしているように、これらを取り巻く業界構造そのものが大きく変化していることも原因の一つと言えます。

また、DeepL のような機械翻訳サービスの台頭により「簡単な翻訳は AI や機械翻訳に取って代わる。人間にしかできない翻訳とは何か」という点も関係しているでしょう。

現在、様々なプレイヤーによって翻訳業界は変革の中にありますが、どうして変革しているのかは、「お客様のニーズの変化が起きたため、翻訳会社が変化に対応する」というのが本質だと言えます。

以下のページでは、その業界を占める4つの勢力について記載しています。

翻訳の功と罪

機械翻訳との違い

一方で、機械翻訳技術も発達してきました。ニューラルネットワークを活用した Google 翻訳の精度が飛躍的に向上したのは記憶に新しいでしょう。

現在も機械翻訳は日々進化を遂げていますが、読み物としてのドキュメントの場合には、まだ改善の余地がありそうです。ただ最近では、「機械翻訳+ポストエディット」という組み合わせのサービスが認知され始め多くの企業での活用が始まっています。

機械翻訳の問題点を解決するポストエディットとは

現状、機械翻訳自体は原文の意味を理解しているわけではないので、この部分では、まだ翻訳者の優位性は変わらないと言えますし、マーケティング翻訳との違いは明確になるでしょう。「文章の質」を細分化していくことで、いずれは棲み分けがなされる可能性もあります。

翻訳支援ツールとの相性は

機械翻訳や自動翻訳に似た概念として「翻訳支援ツール(CAT)」があります。翻訳支援ツールは、あくまで「翻訳者がメインであり翻訳作業をサポートする」という立ち位置です。

Translation Memory というデータベースを構築し、精度を高めていくわけです。

TM の精度について

基本コンセプトは、「n対n」で原文と訳文をペアにしてデータベースに格納していくわけですが、マーケティング翻訳との相性という点から考えると、ツールの使用自体がなかなか難しいケースもあると言えます。

それは何故でしょうか?これは原稿のバージョンアップのケースを考えるとイメージしやすいかもしれません。

データベースに格納された訳文は、センテンスで保管されます。最初に翻訳した際にはその訳し方で問題なかったとしても、ドキュメントが変更になったときに、果たして「データベース内の訳文をそのまま使えるのか」という疑問が残ります。

例えば「you」という単語ひとつとっても、最初は「あなた」で良かった場合でも、文脈によっては「お前」と訳さないといけないかもしれません。

これは結局のところ、マーケティング翻訳ではデータベースよりも「文脈(コンテクスト)」や「リズム」がより重視されるためです。

ところがデータベース優先になれば、登録されているぎこちない「あなた」を使うことになります。結果として読み手は「読みにくい文章」と感じるわけです。

ツールを使えば再利用率は高くなるかもしれませんが、マーケティング翻訳やクリエイティブ翻訳には向いていないと言えます(弊社もマーケティングマテリアルでのツール使用は限定的です)

※読みやすさなどは二の次で徹底的にコストを抑えるという目的の場合には、ツールの使用は目的に適っていると言えます。

コピーライトやライティングをすればいい?

マーケティング翻訳やクリエイティブ翻訳をご紹介すると、「通常の翻訳とも違う、機械翻訳とも違う、翻訳支援ツールも使わないのは理解したが、結局翻訳は変わらないのだからそれならライティングの方がいいのではないか?」というご質問をいただくこともあります。

このご質問への回答としては「その通りです」とお伝えしています。

プロのライターによる取材を重ね、サービスや商品への理解度を深め、訴求力のあるワードを選び構成していくという点では、圧倒的にライターに軍配が上がります。

そしてそれは当たり前の話であり、むしろそうでなくてはならないとも言えます。

弊社でご提供するマーケティング翻訳は「翻訳以上、ライティング未満」であることは前述の通りであり、あくまで「翻訳」の範疇で行われるものです。

一方でライティングには「原文」の制約はありません。つまり誤解を恐れずに言えば自由度が非常に高いわけです。(もちろん、完全に自由な仕事はありませんが)

その代わり、かかるコストは翻訳とは比べ物にならない位大きくなるでしょう。

つまり、ライティングとマーケティング翻訳では、作業範囲や内容が異なるため比較自体に意味がありません。マーケティング翻訳で大切なのは「コストもできるだけ抑えつつ、できるだけ魅力的な文章を作りたい」というお客様のためのサービスだということです。

文書の読みやすさコスト
機械翻訳
翻訳支援ツール
マーケティング翻訳
クリエイティブ翻訳
ライティング×

世の中のグローバル化が進み、今後翻訳市場は大きくなると言われていますが、これは言い換えれば、翻訳をするドキュメントが増えているということです。しかしそのすべてにライティングをすることは現実的に難しいでしょう。

となれば、「できるだけライティングに近い形で翻訳したい」というニーズが高まるのは自然な流れです。

まとめ

いかがでしょうか。最後に簡単にまとめると以下のようになります。自社に合った形で翻訳サービスを利用するようにしましょう。

  • マーケティング翻訳の目的は、読み手にしっかり伝わる訳文を作ること(ツールやシステムはその次)
  • マーケティング翻訳の定義は「翻訳以上、ライティング未満」であること
  • 機械翻訳も、翻訳支援ツールも、ライティングもすべて使用目的によって変えるべき

マーケティング翻訳やその他の翻訳、通訳サービスについてはお気軽にお問い合わせください。


翻訳は「手段」であって「目的」ではない

弊社は主に「コミュニケーションサービス」を提供している企業ですが、そのうち、翻訳や通訳といった言語サービスを中心にご提供を行っています。

お客様からサービス提供への対価をいただきながら、経済活動を行っていますが、時折、そこに該当しないケースがあります。より大きな目的(弊社の場合には経営理念の実現)の場合であれば、該当しなくても(長期的には整合性が取られるため)問題ありませんが、以前にはそうでないケースも散見されました。

このあたりはもしかしたら業界構造や業界の変化にも関連しているかもしれません。

翻訳の功と罪

今回はビジネスでついつい「勘違い」してしまいがちな点について考察します。

陥りやすい「手段の目的化」

今はもうほとんどありませんが、以前に多かったのは「手段の目的化」です。翻訳や通訳サービスは、それを利用するクライアントのビジネスコミュニケーションをスムースにするためのツールのひとつであるべきで、それ自体が目的になってしまうのは本末転倒です。

具体的には、翻訳者の作る訳文がクライアントが求めるものとずれ、クレームになる場合などを指します。プロの翻訳者が行なう翻訳作業なのですから、ある一定の精度があるはずです。にもかかわらず、どうしてクレームになるのでしょうか?

考えられる原因はいくつかあります。

  1. 翻訳者の実力不足(一定の精度が無い訳文だった)
  2. 翻訳会社のヒアリング不足(営業窓口の力不足)、不適切なアサイン(人には向き不向きがある)
  3. クライアントが翻訳以上のものを求めている
  4. クライアントの好み(恣意的なもの)
  5. 納期等のその他の条件

 

これ以外でも、できない原因はあげればキリがないので、このあたりにしておきますが、いずれにしても様々な原因でクライアント期待とは違うものが納品されてくればクレームになる場合があります。

つまり、上記のような点が「ずれているから」起きてしまうトラブルやクレームが一定数存在します。

いったい何のために翻訳するのか?通訳するのか?

手段を目的化しないために、最初から最後までブレてはいけないのは、この翻訳、通訳の目的は何か?いったい何のためにクライアントは翻訳や通訳を利用するのか?ということです。

これは翻訳会社としてもしっかりヒアリングしなければならない部分ですし、それをコーディネーターから的確に翻訳者に伝えなければならない点です。

逆に、それをしっかりと汲み取って訳文を作ったり、通訳していくことができれば、理論上は大きな齟齬というのは出ないはずです。

※特に通訳の場合には、現場での対応になり、クライアントの担当者と直接打ち合わせができることも多いため、本来の目的を確認しやすいと言えます。

どの企業も、どの業界でも共通しているのは、ビジネスのコミュニケーションをスムースにして期待する成果を得ることであり、それを達成するために私たちは翻訳や通訳サービスを提供することで何ができるのか?ということです。

これを見失ってしまうと、クライアントの期待する翻訳や通訳サービスにはなりません。誤解を恐れず言えば、「作り手の独りよがりのサービス」になってしまうのです。

翻訳や通訳というサービスは、限りなく商品に近いところにあるために、ついつい勘違いしてしまいそうですが、残念ながらそれ自体は目的にはなりません。もし「翻訳すること」自体が目的であれば、それはビジネスではなく、ボランティアや趣味、また自分自身の勉強のためであることがほとんどではないでしょうか。(ちなみに、これらが悪いということではなく、ビジネスコミュニケーションサービスとして提供する以上はクライアントがいるわけですから、その要望も汲み取っていかなくてはならないということです)

これは英会話なども同様です。英語と言うツールを使って、仕事をスムースに進めることが重要な目的であって「英語が話せます」という話ではありません。実際の現場では、TOEIC の点数が非常に高くても、ビジネスの基礎がない人は活躍することできないのは何も英語に限った話ではありませんので、細かく説明するまでもないでしょう。

エグゼクティブ専門英会話 [Be Confident]

翻訳という仕事をしていると、どうしても TOEIC が高得点でなければならないといった類のことを言われることも多いですが、実態はそうではありません。「翻訳力」とでも言うべき能力はまったく定義が異なります。

 

「翻訳力」とは何か

 

「お客様に喜んでもらう」ことがひとつのバロメーター

仕事にはどれも相手(お客様)がいます。その「お客様のために価値を提供する」ことが重要なのであり、結果として収入や報酬があるのです。

クライアントが困っていることに対し、自ら蓄積してきた能力や経験で解決することが重要です。大ざっぱに言ってしまえば、人の役に立つことです。お客様の役に立つことを本気で考えれば、自ずととるべき行動は定まってくるでしょう。それは自己満足でも自慢でもないはずです。手段が目的化されている場合には、「自分がやったから結果が出たんだ」となりがちなので要注意です。

それよりも全力を尽くし、その結果としてお客様から感謝されるほうが自分が持つ能力が誰かの役に立てたと思えるのではないでしょうか。こういう真摯な気持ちで仕事に向き合ったとき、人はさらなる成長をすることができます。

翻訳も通訳も「お医者さん」と同じ

翻訳も通訳も様々なテクニックや最新のツールやテクノロジーがあります。ドキュメントによって訳し方が違ったり、分野によっても扱うドキュメントは様々です。

しかしそれ以前のスタンスの問題として自覚しておかないといけないことがあります。

それは、プロフェッショナルとしての翻訳者や通訳者は、その高い専門性や高い言語能力を駆使して、お客様の困りごとを解決できるということです。いわば「お医者さん」と同じように正しい診断を行い、治療法を提案していくこと、また専門性が高ければ、ブラックボックス化せず、インフォームドコンセントを行い、クライアントが満足する治療を受けることができるのです。

この正しい心構えを持ち、最新のテクノロジーを駆使し、自らの能力を最大限発揮することができれば、クライアントの悩み(顕在的/潜在的)を解決することができるのです。


登録翻訳者の人数が多ければ良い翻訳会社なのか

お客様から時折、以下のようなお話をお伺いします。

「A 社さんは、翻訳者が1万人もいるんだって」

「B 社さんは、全部で翻訳者 5万人もいるって書いてあるよ」

このようなお話をお聞きするたびに、毎回ご説明を差し上げておりますが、今回はこのテーマについて考えてみたいと思います。

多くの翻訳会社がフリーランス翻訳者の登録で成り立っている

まずはじめに、多くの翻訳会社は、フリーランス翻訳者を登録することによって実際の翻訳作業を賄っています。稀に社内翻訳者を抱えることで、社内で翻訳作業を行なっているケースもあります。彼らは「インハウストランスレーター」と呼ばれたりもします。

翻訳会社から見た場合、社外の登録翻訳者のコントロール、いわゆる「リソースマネジメント」がとても重要になります。

これは翻訳業界だけではなく、制作会社ならフリーのエンジニアやデザイナー、出版社ならライターといった職種と共通事項がありますので、何も特別なことではありません。

繰り返しになりますが、このように、多くの翻訳会社はフリーランスの翻訳者に登録してもらうことによって、クライアントから依頼された実際の翻訳作業をこなすことができます。

また翻訳業界全体や翻訳会社の基本的な機能については以下の記事をご覧ください。

翻訳業界と翻訳会社

フリーランス翻訳者として必要なもの

さて、今度は翻訳者の立場から考えてみましょう。

「フリーランスとして生きていく」という選択をした場合、翻訳作業だけでなく翻訳会社への営業やマーケティングも必要です。またコスト管理も外せません。確定申告なども年に1回発生しますから、経費精算など日々の地味な作業も発生します。

また「自分」を商品として考えた時に、「誰に対して、いくらで、何を、どのくらい売るのか」ということを様々な角度から検証していかなくてはなりません。

これも翻訳者だけが特別なのではなく、フリーランス全般に言えることなので、特に珍しいことではありません。むしろ誰もが理解していることです。(理解していなければフリーランスは向かないでしょう)

これらは自分を1つの「会社」として考えれば、すべて必要なことです。そしてこの「責任」があるからこそ、それと同等の「自由」があると言えます。

フリーランス翻訳者は 1社のみ取引をするのか、複数社との取引なのか

この自由と責任が一体となっているフリーランスですが、本テーマに沿って考えていくと、フリーランス翻訳者にとっては特定の翻訳会社とだけ付き合っていく方がいいのか、もしくは複数社と付き合っていけばいいのかという疑問が浮上します。

こちらは、正解はありません。

なぜなら個々人のフリーランスとしての矜持や価値観、フリーランスとしてのそれぞれの戦略、方向性によって答えは変わってくるためです。結局のところ、自分が思うようにやるしかないのであり、そこにも自由と責任があります。

しかしながら、一般論として論じるのであれば、複数の翻訳会社と取引や口座を持っておく方が毎月の売上(収入)のリスクヘッジにはなります。逆に、年間契約のように1社専属で取引ができる状態で、かつそれがずっと継続する保証があるなら、登録するのは1社だけで問題ありません。

とはいえ、万物は流転します。この世に変化がないものはありません。企業は生き物である以上、必ず良い時も悪い時もあります。そう捉えた時には、やはり複数の翻訳会社に登録しておくことで、A 社から仕事がないときには、B社でフォローするというのは通常の考え方ではないかと思われます。

※ここでは「フリーランス翻訳者としてどう振る舞うのか」がテーマではないので詳細は割愛します。

つまりここから分かることは、(一般的に)フリーランス翻訳者は複数の翻訳会社と取引をしている実態が間違いなく存在するということです。

もし「登録翻訳者 100万人」と「登録翻訳者 100人」という翻訳会社があるとすれば、どちらが良い翻訳会社なのか?

さて、この事実を直視し、冒頭のフレーズに戻ります。

例えば、これは極端な例ですが「弊社は翻訳者が100万人います」と言うのと、「弊社は翻訳者が100人います」という言葉では、実際の業務にどのくらいの違いがあるのでしょうか?

そして、一体どちらが良い翻訳会社なのでしょうか?

もちろん単純に「数」という点で考えれば、100万人の登録翻訳者がいる翻訳会社の方が良いのでしょう。ただこれは完全に片手落ちの状態です。

なぜなら「100万人の翻訳者に常時仕事を発注しているわけではない」からです。100万人のうち、その案件に見合った人、クライアントの指名の人、継続案件の人など、仕事にも様々な状態があるからです。

仮に、まんべんなく100万人分の仕事を継続して発注できる/しているという翻訳会社があるとすれば、それはかなり優秀だと言えますし、もしかしたら、そういう会社も世界を見渡せばあるのかもしれません。

とはいえ、翻訳産業は 100% 受注産業です。そのため、まず初めにニーズが発生しなければ、翻訳の仕事のオーダーはありません。ということは、クライアントの市場規模や趨勢、世の中の流れなどによって常に翻訳ニーズは変動しているということです。多い時もあれば少ない時もあるはずです。

これを裏付けるものとして、「登録はしたけれど、仕事の連絡はない」ということもあるでしょう。しかし実は、これは「翻訳会社とフリーランス翻訳者」だけでなく「1次翻訳会社と下請の翻訳会社」という関係でも同じことが起きています。

大元の翻訳会社からすれば、「(受注産業なので)いつ大型案件が発生するか分からない。だから翻訳会社の登録だけ増やして済ませておきたい」という判断でしょう。ビジネスとしては当然のことです。

そしてこの構図がフリーランスの翻訳者に対してもあてはまるのは何ら不思議ではありません。

また、どんな仕事でも同じですが、同じやり方で何年も仕事を続けられるような甘い世界はありません。常に改善し効率を上げていかなければならないのです。職人の世界でさえ、いえ、職人の世界だからこそ、外側からは目に見えない小さな変化や改善を加えているのです。

逆に言えば、これら大小の変化がテクノロジーの発展やイノベーションを支えているわけであり、より良い世界の実現へ向かう原動力とも言えます。

翻訳業界でいえば、AI を代表とする機械翻訳、MLV などのグローバル企業の参入など驚くほどのスピードで様々なビジネスモデルとテクノロジーが参入しています。

※様々な参入者、そして今後翻訳サービスはどうなるのかについて以下の記事をご覧ください。

翻訳の功と罪

マクロ的視点でもミクロ的な視点でも、変化は常に起きています。それを忘れてはなりません。

こう考えていくと、本当の意味で、「100万人の登録翻訳者のいる翻訳会社」と「100人の登録翻訳者のいる翻訳会社」とではどちらが良い翻訳会社なのでしょうか?

一概に、100万人のフリーランス翻訳者がいる会社とは言い切れなくなってくるのではないでしょうか。

結局、身の丈に合ったビジネスしかできない

そうなると、大切なのは登録人数ではありません。

発注側として、もし人数で判断しなければならないのであれば、登録されている翻訳者のうち「週ごと、月ごとなどでどのくらいの人数が実際に稼働しているのか」を確認したほうがよいでしょう。

これは翻訳会社側としての方針となりますが、結局、どれだけ大きく見せようとしても、実態がかい離してしまうとあまり説得力が無くなってしまうわけで、身の丈に合った形で、少しずつでもきちんと登録翻訳者を増やし、得意分野を伸ばしていくしかありません。そしてそれはとても地道ですが、一番の近道であると言えるでしょう。

もちろん現在大手と呼ばれる翻訳会社は、こういうプロセスをコツコツと大胆に進めてきたからこそ、今の形になっていると推測しますし、翻って弊社も見習っていかなくてはなりません。

まとめ

いかがでしょうか。実際のところ、どの産業でも戦略上、数で勝負しなければならないステージは存在しますし、ある一定の数を超えていなければ、勝負にすらならない(土俵に上がることもできない)という事実も一方であります。

また「沢山いる/あることはイイことだ」という、ある種の固定概念に縛られてしまっているケースもあります。「どんなに実力があっても数人ではこなせない」という仕事もあるでしょう。ですから、すべてがこうだとは言いにくいのですが、今回のテーマに限っては、翻訳会社が単純に「数」だけを全面に押し出してくるケースがあること、また発注側としてはそれをそのまま真に受けてしまうことにはリスクが伴うということです。

「質と量のバランス」こそが最も大切なのだと言えるでしょう。

Podcast「プロフェッショナル翻訳者への道」

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フリーランス翻訳者として、また翻訳者にこれからなりたいという方のための番組で毎回様々な切り口でお届けしております。ご興味がございましたらぜひご登録ください。